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な作品が時たまございます。最近の例で言いますと、今、東京のアートスフィアというところでやっています「蜘蛛女のキス」というミュージカルがございます。これはマヌエル・プィグというラテン・アメリカの作家の小説を原作としております。獄中での同性愛−革命家はもともとは同性愛者ではなかったんですけれども、同室しました同じ牢屋の相方の男性がホモだったために、そういう関係になるというような題材です。とてもじゃないけれども、いわゆるミュージカルプレー、ミュージカルコメディーになるような題材ではないんです。ハロルド・プリンスという人は、そういうことにかけては、大変な手腕の持ち主でございまして、例えばこれはコマ劇場でやりましたけれども、「その男ゾルバ」なんていうミュージカルなども、アンソニー・クインという人が主演した映画を見ていますと、とてもじゃないけれども、ミュージカル化されるようなものではございません。だから、そういう意表をつくというのか、人が考えないようなことを考えるプロデュースというのは、そういうものができたら、これはもう喜びは麻薬ようなものじゃないかと思います。
こじきと役者は1日やったらやめられないとかというようなことを言いますけれども、役者も拍手を浴びるというのが大変快感を得るということで、どんなつまらない役しか回ってこないギャラの安い役者でも、一生涯役者をやっている人がたくさんいますので、そういう喜びがございます。もちろんプロデューサーは、役者のように舞台に実際に出るわけではありませんから、演出を兼ねるハロルド・プリンスのような人はいますけれども、まず日本の場合は、そういうプロデューサーというのはいないと思いますが、プロデューサーは日陰の、いわゆる縁の下の力持ちなのかと皆さんは思われるかもわかりませんが、実際にその糸を引いていると言ったり、黒幕と言ったら語弊がありますが、そういう立場がプロデューサーでございます。
それと、欧米のプロデューサーと日本のプロデューサーの決定的な違いは、欧米の場合はほとんどフリーのプロデューサーですね。私のように株式会社シアター・ドラマシティ―ちっぽけながらにせよ、親方日の丸で、赤字が出ても首にならないというようなプロデューサーというのは外国では考えられない。そのかわり、そのプロデューサーがすべてお金を集めてくるわけです。日本の場合、なぜそういうブロデューサーが出ないのかと申しますと、税法上ちょっとそれができない。というのは、もうかると資金を提供した人に配当をするというのが日本の税法上では贈与になるんですか、できないと思うんですね。だから、欧米並みのようにお金を集めてきて自分の制作の理想の形にそのお金をつぎ込ん

 

 

 

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